新型コロナウイルスの感染者数から見る今後の医療と経済

新型コロナウイルス感染拡大後の医療と経済

新型コロナウイルス感染症が猛威をふるう中、活動自粛や外出自粛要請など様々な対策が講じられています。その結果、ピーク時に比べ感染者数は減少傾向にある一方で、経済への影響は激しく今後の見通しもつかない状況です。今回はコロナウイルスの今後の展望や現在打ち出されている対策・支援について見ていきます。


新型コロナウイルス感染患者の推移

我が国では、都市部を中心にクラスター感染が次々と生じるなど不安が広がっています。いったいいつまで続くのか。私たちの暮らし、経済、医療への影響は計り知れないでしょう。

緊急事態宣言発令後の感染状況は”減少傾向にある”とのことですが、3月に急増した感染者数の上昇スピードに対して、縮小スピードは緩やかであると示されています。しかし大都市圏からの人の移動により、地方に感染が拡大し、全国的に見ると感染の縮小のスピードが、東京に比べて鈍く、長期化が懸念されています。早期診断や治療法の確立など明るい兆しが見えつつありますが、国内における感染状況に応じて、持続的な対策が必要となるでしょう。


政府の感染対策がもたらした効果

医療面は医療崩壊ぎりぎりの瀬戸際

連日メディアからは、世界各地で見られる「医療崩壊」や「感染爆発」のニュースが流れています。イタリアやアメリカでは医療従事者の対応が追い着かず、集中治療を行う人や人工呼吸器を使用する人の選択に関する倫理指針が出される事態にまで陥りました。日本では、緊急事態宣言が出されてからクラスター対策やフィジカルディスタンスの確保などにより新規感染者数は減少している傾向にあるものの、「収束に向かっている」とは言えない状況です。「自粛疲れ」はあるかもしれませんが、気を緩めてしまうと感染者数が急増する可能性は十分にあります。

医療崩壊とは「安定的・継続的な医療提供体制が成り立たなくなる」状況を指します。新型コロナウイルス感染症に関しては医療従事者の懸命な対応により何とか持ちこたえている印象です。一方で、慢性疾患に対する定期健診や手術,がん治療など本来病院へ行くべき人が「コロナに罹りたくないから病院へ行かない」もしくは「緊急事態宣言出てから病院が閉鎖もしくは外来受診を受け付けていない」事態が日本で起きてしまっています。これは安定かつ継続的な医療提供ができていない、つまり医療崩壊が起きていることになります。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、オンライン診療に関する指針が例外的に見直されました。この見直しによって初診でも電話もしくは情報通信機器を使っての診療が可能となり、適切な医療の提供が期待されています。

経済面は休業延長による収入減、事業倒産も

非常事態宣言の発令に伴い外出自粛求められたことや休業申請により、東京都では平常時 (令和 2 年 1 月) と比べて同年 4 月 11 日以降の外出自粛率が 50% を超えているという報告があります (同年 5 月 4 日現在)。これは感染拡大防止の観点から十分ではないものの一定の効果が期待できる数値と言えますが、日本経済にとって良い結果とは言えません。中部圏経済研究所は新型コロナウイルス感染症の経済的な影響について、実質国内総生産の減少率は少なくとも 9.7% になると報告しています。

人の流れがなく消費も落ち込んでいる状況は、特に観光業や飲食業に対して大きな打撃を与えています。売り上げが落ちると雇用調整が必要となり、正規・非正規を問わず休業を命じられるケースも出てきています。本来であれば休業中に休業手当が支給されるはずですが、休業手当が支払われないもしくは突然解雇されることが実際に起きてしまっています。シングルマザーを対象としたアンケートでは新型コロナウイルス感染症が原因で収入がなくなるもしくは減ると回答した人が約半数に上り、大学・短期大学・専門学校に通う学生を対象としたアンケートでは収入が減ったもしくはなくなったことで退学を検討している人が 8% ほどいることがわかりました。

このように直近の生活に対しても見通しが立てられなくなっている人が多くいる中、政府や各自治体が個人や企業に対して経済対策を打ち出して何とか持ち堪えようとしており、実際に日本政策金融公庫に対する中小企業からの特別貸付の申込件数が 26 万件 (融資決定件数は 13 万件) と急増しています (同年 4 月 19 日現在)。その他に、飲食店がテイクアウトやデリバリーなどの取り組みをしている一方で、同年 5 月 1 日現在で日本の新型コロナウイルス関連倒産件数は 115 件に上っているのが現状です。


医療と経済のバランスが社会システムを変える

新型コロナウイルスは長期化する可能性が高い

新型コロナウイルス感染症は未だ猛威を振るっており、今後どのような経過を辿るのかは定かではありません。インフルエンザウイルスを保有する水鳥が寒くなると日本へ運んで来るように、現在世界的に流行しているウイルスと共生できるような動物がいた場合、長期化する恐れも十分にあります。長期化した場合に大切なことは医療と経済のバランスです。緊急事態宣言発令により新規感染者数が減りつつある今、マスクや人工呼吸器など不足する懸念があるものの増産・ワクチンや新規治療薬の開発など既に医療体制を整えるための行動は始まっています。既存の医薬品を新型コロナウイルス感染症治療に用いる動きもそのひとつと言えます。

しかし、新型コロナウイルス感染症が終息するもしくは医療体制が完全に整うまでの具体的な期間が示されていないため、経済回復に向けた動きも進めていく必要があります。既にコロナ禍により、多くの企業が新たに導入しているテレワークもそのひとつです。ただ、これに留まるのではなく、1929 年から始まった世界恐慌以来の景気抗体の可能性がある経済悪化に立ち向かうには社会全体のシステムを変えていく必要があります。

感染者数に応じて対策を施しながらの事業再開になる

経済活動を再開していくにしても、やはり感染防止策は欠かせません。仕事量や内容が徐々に平常時へ戻っていくとしても、密閉・密集・密接のいわゆる 3 密を避けた行動は心掛ける必要があります。外食や旅行の機会も少しずつ増えていくとは思いますが、こちらも 3 密を避けることが必要です。つまり、フィジカルディスタンスを保って実施できるよう対策をしてから活動を再開していくことになります。


さいごに

既にくつかの国や地域では新型コロナウイルス感染症の拡大防止に対する規制を解除もしくは緩和しており、少しずつ経済活動が再開されています。日本でも緊急事態宣言を解除する時期や条件の検討が始まり、長い自粛生活の出口が見えつつあります。今をどう乗り切るかを考える必要はありますが、今後は経済活動を再開する時に自分が取るべき行動を考えて準備を進めていきましょう。

参考資料

厚生労働省医政局医事課 “新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて

国立情報研究所 水野研究室 “COVID-19特設サイト:外出の自粛率の見える化

公益財団法人中部圏社会経済研究所 “新型コロナウイルス感染症が2020年度の全国・中部圏に与える経済的な影響について

内閣府 “新型コロナウイルス感染症緊急経済対策

 NPO法人 しんぐるまざあず・ふぉーらむ “新型コロナでの影響:シングルマザー世帯への支援策に関するアンケート結果 (2020/04/13暫定版)

高等教育無償化プロジェクト FREE “「新型コロナ感染拡大の学生生活への影響調査」の中間結果報告

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