新たに判明した新型コロナウイルスの感染による下痢症状

新型コロナウイルスの感染による下痢症状

新型コロナウイルス感染症の症状が徐々に明らかになり、発熱や咳などの呼吸器症状が主に取り上げられていますが、下痢などの消化器症状も報告されています。今回はウイルス感染症と消化器症状の関係や下痢の対処法、さらに家庭や会社におけるトイレ使用時の注意点や清掃について確認していきましょう。


報告されている初期症状

新型コロナウイルスに感染した場合、最初に現れやすい症状は発熱・咳・倦怠感・呼吸困難 (息苦しさ) があります。その他、筋肉痛・下痢・頭痛・動悸・味覚や嗅覚の障害・結膜炎様症状などが起きる場合もあります。新型コロナウイルス感染症は呼吸器感染症の一種と考えられていますが、消化器感染症様の症状も現れることが分かっています。


下痢も新型コロナウイルスの症状の一つ

新型コロナウイルスの主な感染部位は肺や気管支などの呼吸器だと言われている一方で、下痢など呼吸器とは直接関係がないように感じる症状が現れるのはなぜでしょうか。この理由は腸管感染が起きているからだと考えられています。新型コロナウイルスは細胞膜上に ACE2 が発現している細胞には侵入することができ、消化管でもウイルスが侵入して下痢などの症状を引き起こしている可能性があります。

補足:新型コロナウイルスが細胞内に侵入する時に細胞表面に存在する ACE2 (アンジオテンシン変換酵素 2: Angiotensin-Converting Enzyme 2) と呼ばれるタンパク質と結合する必要があると報告されています。この ACE 2 は呼吸器の細胞だけでなく消化管・肝臓・腎臓・心臓など様々な組織に存在しています。


下痢が起きた時の対処法

下痢止めを服用は極力控える

新型コロナウイルス感染症に限らず腸管感染による下痢の場合は下痢止めを飲まないことが推奨されています。下痢止めを飲んでも十分に効果が期待できない・病原体の排出を長引かせる・腸の動きが悪くなり腸管が塞がることが起きる可能性があるため、むやみに下痢止めを服用することは避けてください。必要時の下痢止めが有効な場合もありますが、ウイルス性の下痢については受診の必要があります。症状を医師に伝えましょう。

水分をしっかり摂取する

ウイルス性の下痢症状がある時は腸粘膜から水分を過剰に分泌するため、便中に水が含まれ過ぎている状態になっています。つまり、本来であれば体の中に入っていくはずの水が体の外へ出てしまっていることになります。これが下痢の時に脱水症状が起きる原因です。脱水症状に陥ってしまうと非常に危険ですので、こまめな水分補給を心掛けましょう。水分補給には経口補水液やスポーツドリンクが適しています。


下痢症状は自宅待機すべきか

発熱や咳がなくとも下痢症状が新型コロナウイルス感染症による場合、ウイルスに感染していることに変わりはありません。また、感染者の便中からウイルスが検出されることもあります。したがって、下痢症状のみの場合でも可能限り自宅待機することをおすすめします。


発症者や感染疑いの方がトイレを使用する際の注意点

エアロゾル感染する可能性がある

家や職場などで感染者が共有のトイレを使用する場合があります。使用後に便器の蓋をせずに流してしまうと、流す際の水圧によってウイルスを含む微小な粒子 (エアロゾル) が空気中に漂い、ウイルスがドアノブなど手で触れる場所に付着してしまうこともあります。トイレ使用後は普段以上に手洗いを徹底してください。

可能な限りの防具を着用し消毒を行う

感染者もしくは感染の疑いがある人がトイレを使用した場合、感染拡大を防ぐためにトイレの消毒を行う必要があります。この時、ウイルスを含むエアロゾルが発生している可能性があるため、マスクや手袋だけでなくゴーグルや全身を覆うガウンなどを着用し、便器以外にもドアノブや水道など手で触れる可能性がある場所を全て消毒しましょう。ガウンがない場合、ポリ袋をかぶるだけでもある程度防御は可能です。消毒後、使用した防具は適切に処理をしてください。

一定期間使用を禁止することも検討

ウイルスを含むエアロゾルが一時的に大量発生していた場合、目視で確認することは難しいだけでなく感染するリスクが非常に高くなっています。消毒する時の防具が十分でない場合や消毒直後などは必要に応じて使用禁止期間を設けることも感染対策としては有効です。


アルコールがなければ次亜塩素酸ナトリウムで代用

消毒用アルコールが手に入らない場合は塩素系漂白剤の主成分である次亜塩素酸ナトリウムで代用することもできます。0.05% 次亜塩素酸ナトリウムが新型コロナウイルスの消毒に有効だと考えられています。次亜塩素酸ナトリウム水溶液は市販の塩素系漂白剤を水で薄めることで簡単に調製できます。


無理のない程度に清掃を

新型コロナウイルスに感染しないためには手洗いや手指消毒など日々の感染対策が重要です。それに加えて、トイレなどの共用施設を清掃する回数を増やしたり、簡単な消毒作業を取り入れるなど可能な範囲で感染対策を実施することで感染拡大を未然に防ぐことができるかもしれません。

[参考資料]

⼀般社団法⼈ ⽇本環境感染学会 (2020) “医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド第 2 版改訂版 (ver.2.1)

Peng Zhou et al., (2020) “A Pneumonia Outbreak Associated With a New Coronavirus of Probable Bat OriginNature, 579 (7798): 270-273. doi: 10.1038/s41586-020-2012-7

一般社団法人日本感染症学会 (2016) “JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2015―腸管感染症―

一般社団法人 日本臨床内科医会 (2010) “わかりやすい病気のはなしシリーズ42 下痢の正しい対処法

堀 賢 (2009) “ウイル ス性感染性腸炎 の感染対策” 順天堂医学, 55 (2): 113-115.

David L. Johnson et al., (2013) “Lifting the lid on toilet plume aerosol: A literature review with suggestions for future researchAm. J. Infect. Control, 41 (3): 254-258. doi: 10.1016/j.ajic.2012.04.330

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